うつ病からがんの治療までオーソモレキュラー療法(栄養療法)の実際
医療法人回生會 新宿溝口クリニック 医師・歯科医師向けセミナーのご案内
うつ病、パニック障害、発達障害からがんの治療まで海外で広く実践されている「薬だけに頼らない」オーソモレキュラー療法を紹介します。投薬治療が中心のうつ病や統合失調症などに多くの実績があり発達障害にも応用されています。高濃度ビタミンC点滴療法は、がんの治療に新しい可能性を提供します。

院長よりご挨拶
溝口 徹

溝口 徹(みぞぐち・とおる)
自分にとって必要な栄養素を知ること。そして、その栄養素を十分に摂取すること。正しく、十分な栄養素が、自分の心と身体を、より良い状態に改善させます。
精神疾患の診断を受け、多くの薬を用いて対症療法の治療をされている方が多すぎます。最適な代謝が、脳内の神経伝達物質の分泌を適正化します。その結果、薬が必要であった症状の多くが改善することを、分子栄養学的なアプローチでは多く経験します。
このブログでは、日々の診療で経験する多くの患者さんの経過や、その背景にある学術的な作用を、できるだけわかりやすく伝えてゆきます。本来の自分らしさ取り戻すために、少しでも役立てていただければ嬉しく思います。

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鉄の代謝とフェリチン

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自分がこの治療に出会った1998年当時、フェリチンは70台でした。男性とすると低く、アトピーや花粉症などの原因の1つになっていたかもしれません。それから約15年間ヘム鉄を飲み続けていました。フェリチンが240を超えた頃からフェリチンの上昇が遅くなり、270を超えたことからはヘム鉄のサプリメントを1カプセル飲むと便が黒色になるようになり、フェリチンはそれ以上上昇しなくなったので鉄の服用をやめました。つまり自分の貯蔵鉄が満たされ腸管から鉄を吸収しなくなったことを示します。
鉄代謝の教科書にも、人は貯蔵鉄が満たされると食材に含まれる鉄を吸収しなくなると書かれています。貯蔵鉄が満たされたときのフェリチン値は個人差がとても大きいことも書かれていました。教科書には鉄を服用しているときにフェリチンが上昇しなくなったら、それは貯蔵鉄が満たされたことであると書かれていますが、それを真に受けてフェリチンチャレンジなどしないようにしてくださいね。フェリチンは個人差もとても大きいと言うことを認識して下さい。
フェリチンは20以上あればよいと書かれているものもありますが、フェリチン20未満は鉄欠乏以外ではあり得ない数値であるということが根拠かもしれません。本来必要である貯蔵鉄1000mgに相当するフェリチンは80〜240という報告もあります。個人差がとても大きいことが分かりますね。

それでは便が黒くならなければ、鉄を増やし続けても良いのでしょうか?その答えは、NOです。そもそも吸収しにくい鉄をサプリメントや薬剤を用いて吸収を超える量を摂取すると必ず吸収されなかった鉄が腸管に残存します。鉄は腸内細菌の悪玉菌、日和見菌、カンジダなどにとって必須の分子であり、腸内で僅かな鉄を奪い合っています。つまりサプリメントや薬剤などで吸収しきれない鉄が腸内に増えると、これらの腸内細菌は大喜びし活発に活動し子孫を増やすことになるでしょう。つまり腸内フローラの悪化が起こり便秘などの症状が起こるだけでなく、免疫の破綻や粘膜の炎症を作ることになります。またキレートが外れた2価の鉄イオンは、フェントン反応を引き起こし腸内や粘膜上皮近くでの活性酸素の発生を引き起こすことにもなります。

初乳にはラクトフェリンというタンパク質が大量に含まれています。私たちの目や鼻口腔、膣や生殖器などの粘膜面にもラクトフェリンは分泌されています。ラクトフェリンは鉄との親和性がとても高いタンパク質なので、悪玉菌に奪われそうになった鉄と結合することによって悪玉菌の活動を抑制しています。粘膜面はつねに細菌に暴露する危険性があるため、ラクトフェリンが分泌され初期の防衛をしているのですね。そして無菌状態で生まれた赤ちゃんは、あらゆる細菌に無防備です。さらに胃酸もほとんど分泌しないため、赤ちゃんの腸は無防備なのです。初乳にラクトフェリンが大量に存在することによって、嚥下した細菌の悪玉菌の活動を抑制し乳酸菌やビフィズス菌が相対的に元気になります。そのために母乳の赤ちゃんの便は少し酸っぱい臭いがしたりします。あるメーカーはラクトフェリンを作って社員に飲ませたところお腹がへっこみ体重が減る社員が続出したためにダイエットサプリとして売り出し大ヒットしました。これはラクトフェリンによる腸内フローラの改善から得られた結果です。糖質制限をしながらラクトフェリンを摂取するのは、かなり理論的によいダイエット方法かもしれませんね。

さてそろそろエンディングにしなくてはなりません。心も身体も健康であるために、鉄不足の補正はとても大切なアプローチです。脳内神経伝達物質のバランスを整え、心穏やかにすごすことが出来ます。またコラーゲンがちゃんと作られお肌にはりができ、色素沈着を防ぐ酵素の活性も上がります。女性にとって何とうれしいことでしょう。また月経のときにフェリチンが下がることによって起こる様々な不定愁訴も防ぎます。ところが鉄は両刃の剣であり、使い方を間違えると弊害にもなります。特に腸の炎症の原因になることは避けなくてはなりません。
小腸の粘膜は入れ替わりがとても早い組織です。1〜3日で入れ替わると言われています。小腸の粘膜にはフェリチンがあり、鉄が足りないときにはそこから引き出され身体へ吸収されることを既にお伝えしています。つまり鉄が供給されないと小腸粘膜上皮のフェリチンはすぐに底をつきます。よくヘム鉄がなくなり3〜4日経つと鉄が足りない症状が起こるという女性が居るのはそれが原因かもしれません。つまり鉄不足があるときには、ある程度の鉄の補充は炎症が存在しているときにも慎重に継続することが大切なのです。

そのためにどうしたらよいか、自分が考えるアプローチは以下です。
・ヘム鉄を中心に非ヘム鉄を適当量補足する
・腸内環境が悪くないときには、便がやや黒っぽくなる量が適当
・腸内環境が悪い場合や、出来るだけ早く鉄欠乏を補正したいときにはラクトフェリンを併用する
・鉄を増やしても便が黒くならない場合にも、ラクトフェリンを併用する
・鉄の利用を十分に考慮しタンパク代謝を改善させビタミンB群を十分に併用する
まだまだ細かい注意点はあるのですが書き出すときりがなくなってしまうので、ひとまず「鉄の代謝とフェリチン」シリーズは今回で終了となります。
皆さまの参考になれば幸いです。長文を読んでいただき、ありがとうございました。 
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