うつ病からがんの治療までオーソモレキュラー療法(栄養療法)の実際
うつ病、パニック障害、発達障害からがんの治療まで海外で広く実践されている「薬だけに頼らない」オーソモレキュラー療法を紹介します。投薬治療が中心のうつ病や統合失調症などに多くの実績があり発達障害にも応用されています。高濃度ビタミンC点滴療法は、がんの治療に新しい可能性を提供します。

ご挨拶
溝口 徹

溝口 徹(みぞぐち・とおる)
自分にとって必要な栄養素を知ること。そして、その栄養素を十分に摂取すること。正しく、十分な栄養素が、自分の心と身体を、より良い状態に改善させます。
精神疾患の診断を受け、多くの薬を用いて対症療法の治療をされている方が多すぎます。最適な代謝が、脳内の神経伝達物質の分泌を適正化します。その結果、薬が必要であった症状の多くが改善することを、分子栄養学的なアプローチでは多く経験します。
このブログでは、日々の診療で経験する多くの患者さんの経過や、その背景にある学術的な作用を、できるだけわかりやすく伝えてゆきます。本来の自分らしさ取り戻すために、少しでも役立てていただければ嬉しく思います。

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自閉症への栄養アプローチ
自閉症に対して、現在の日本では治癒が不可能であると認識されています。一方、欧米では医師だけでなくあらゆる分野の専門家が集まり、自閉症に対する治療が行われています。

今晩、八重洲の診療が終わった後に、キレーションやデトックスで有名な友人のクリニックでミーティングが開かれました。
その内容は、欧米では通常に行われている自閉症に対する代替療法を、日本でも正しく紹介し治療の現場で取りれてもらえるようにしようというものでした。

この考えを我々に紹介してくれた方は、ご自分のお孫さんが自閉症と診断された経験から行動を始められました。
自閉症の診断を受けたのはよいのですが、その先の治療法がない!?
そして自閉症に関するあらゆる書物を読み漁るようになったそうです。しかし日本では、医師が自閉症の治療に対して記した書物にはあたらず、心理学に関係するようなものばかりだったそうです。
一方、アメリカに目を移すと、医師や細菌学者、免疫学者、基礎学問の研究者、患者の家族などによって構成されている団体が存在することを知ったそうです。
そしてその団体の中心となる医師は、自分の子供が自閉症と診断されたことから、それまでの精神科医としてキャリアを捨て、自閉症の治療に専念するようになったとのことです。

2万例にも及ぶ自閉症に対する治療成績を、正しく評価し公表する。そして、アメリカ議会をも動かし、自閉症への社会的な認識をも変えようとしている。そのような海外の実情と、治療方法はないと言い切る日本の自閉症をとりまく環境の違いに大きな疑問をもたれているようでした。

今後、どのような形で発展していくか分かりませんが、僕の数少ない自閉症の患者さまの治療経験が生かされればと思いました。

自閉症を含んだ小児の発達障害に関しては、栄養療法はとても効果が期待できる分野です。
今後は、多くの分野の方々と連絡をとりあい、海外のスタンダードな治療を踏まえつつ、治療の取り組んでいこうと思いました。

今後もこの分野については、ブログを通して皆様に状況をお伝えしようと思います。
| - | 23:29 | comments(0) | trackbacks(0) |


鉄の効用
最近、釣りによく出かけます。
特に手漕ぎボートで沖へ出て行き、のんびりと釣りをするのは独特の楽しみがあり、ストレス解消(?)の意味もあってよく出かけます。

海の上での手漕ぎボートなので、直射日光の直撃を受けます。日焼け止めクリームを分厚く塗るっているのですが、どうしても焼けてしまいます。

この季節には、日焼けを気にされる女性は多くいらっしゃると思います。
特にシミなどを気にする場合には、日焼けは大敵になります。

日焼けすると、その部分が火照ったり、ヒリヒリしたりするのですが、そこでは局所の炎症が生じています。その部分には、大量の活性酸素が発生していることになります。
鉄はヘモグロビンの構成成分として体中に酸素を運搬するために重要な働きを行いますが、活性酸素を除去する働きを持つカタラーゼという酵素の活性にも深く関与します。
この酵素は、体内で活性酸素が生じたときには、まず最初に働くものなのです。つまり、鉄が不足気味で貧血傾向がある人は、カタラーゼの活性が低く、日焼けなどによって活性酸素が生じたときには、最初の反応がうまくいかなくなります。
このことは鉄が足りない貧血傾向の女性は、日焼けによってシミなどの色素沈着が残りやすいということを意味します。

とかく『鉄欠乏=貧血』という固定概念が一般の方にまで浸透しているため、いわゆる貧血の診断がされなければ鉄は十分であると医師にも思われています。
しかしヘモグロビンが減少する貧血になる前に、組織や酵素に含まれる鉄はすでに減少していることを理解しすると多くの不定愁訴に関係することが分かります。

・低体温  ・易疲労感 ・頭痛 ・胸の痛み  ・抑うつ感
・動悸  ・皮膚の変化  ・爪の変化  ・髪の毛の変化  など・・

これらは鉄欠乏でよく見られる症状ですが、他の疾患や病態として治療されていることが多いものです。
ぜひとも、赤血球やヘモグロビンだけでなく、組織の鉄や貯蔵鉄まで含めた詳しい検査を行ってほしいものです。

| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 19:38 | comments(1) | trackbacks(2) |


薬と栄養素の違い

本日の朝刊に、ある薬の副作用で4名の方がお亡くなりになっていることが報道されていました。この薬は、コレステロールを下げる作用が強く、2ヶ月程度の服用でほとんどの患者さまのコレステロールが急激に低下します。
コレステロールを下げる薬のうち、スタチン系という薬剤については、以前から副作用や危険性について指摘されています。しかし、処方されている量が膨大であり、実際に服用している患者さまも多く混乱を避けるためか、あまりメディアでは取り上げられませんでした。

今回報道された薬は、スタチン系の一種であり新しく開発された種類のお薬です。新薬の場合には、動物実験で重篤な副作用がでなくても、発売前の人での臨床試験で重篤な副作用が出なくても、多くの方に長期間にわたり処方されることによって、予想されなかった副作用が生じることがあります。
今回は、その副作用によって12名の方が劇症肝炎を起こし、4名の方がお亡くなりになったということでした。コレステロールを下げるために飲んだ薬でお亡くなりになったのです・・・。

このブログで紹介している精神疾患領域で使用される薬剤も、次々と新薬が開発され発売されます。最近話題の新薬は、アビリファイです。この薬剤が、日本で使用されるようになり、しばらくすると評価が定まると思います。これまでの経過では、比較的良好な経過をたどられているようです。(新宿では処方しませんし、八重洲でも薬は減量や中止が目的ですが・・)
ジプレキサやリスパダールといった非定型抗精神病薬にかんしても、これから薬剤の評価が確立していくと思います。

基本的に薬剤は、それが風邪薬であろうが鎮痛剤であろうが、服用を増量することによって致死量というものが存在します。それが非現実的な量としても、ある程度の量を服用すると死に至る量が存在するのです。
栄養素については、ビタミンCの大量投与でガス(おなら)が増え、下痢しやすくなります。検査センターがびっくりするような血中濃度までビタミンC濃度を上げると、悪性腫瘍にたいする作用を有するようになりますが、薬のように死に至る量は存在しません。その他、脂溶性のビタミンに関しても、多く使用することによっていくつかの問題点が指摘されていますが、死に至るものはありません。

薬と栄養素の本質的な違いがここには存在すると思うのです。
| ひとりごと | 23:10 | comments(1) | trackbacks(0) |


ある患者さまの経過
新宿では、治療経過を診るために定期的に採血をおこなっています。その時に担当のカウンセラーが症状の変化などを詳しく聞きとります。
血液検査データと症状の変化などの情報が揃ったら、僕のところへ解析の依頼がきます。

今日は、新宿が開院した初期からサポートさせていただいている患者さまのデータが回ってきました。

その方は、統合失調症と診断され15年以上が経過していました。
当クリニックを受診される以前から、大沢先生の本などから栄養アプローチを取り入れられていました。
きっとその当時でも栄養療法の効果はあったのでしょうが、初診時には身体を小刻みに震わせとても落ち着きがなく、顔つきも厳しいものを感じました。

小さなことでイライラし、物や人へあたることもしばしばでした。時に暴力を振るってしまうこと多く、ご両親も辛い時を過ごされたことと思います。また同時に患者さま本人も何より辛かったことでしょう。

当クリニックで治療を行うようになり、ひとつひとつ、少しずつですが確実に改善されてきました。

今日回ってきたデータは、当クリニックで治療を始めてちょうど2年になったものです。

症状の経過を、本人がパソコンで作ってきてくれました。5ページにわたる大作です。

内容は、とても自分の状態を客観的に把握し、自分で対策を立てられるものは記述し、疑問があるものは質問し、ポイントを的確に表現したすばらしいものでした。

その中で、イライラや暴力について自分の解釈を的確に述べています。
そして今年の4月に暴力を振るったのが最後であり、自分としてはもう大丈夫ではないかと思うと、とても冷静に書かれています。
またおそらく15年にわたって継続していた幻聴についても、4月からはほとんどないと書いています。

そして残されている症状についてもとても冷静に書かれています。
原文をそのままご紹介したいくらいです。

『電車の中で眠れる』

このことは外に出るだけで、強い緊張を感じていた彼にとって、大変大きな出来事です。

そして7月から精神科の主治医からの投薬量が減ったそうです。

血液検査データもすばらしい改善です。

カウンセリングでお会いするのが、今から楽しみです。
本当に多くのことを教えてくれています。


| 統合失調症 | 22:42 | comments(0) | trackbacks(0) |


戦争とうつ
極度のストレス下では、人の精神活動は大きな影響を受けます。

特に戦闘地域で兵士が受けるストレスは大きく、戦闘地域から帰還後に様々な精神症状が生じることが知られています。
特に抑うつ感情やうつ病の発症率は高いことが知られ、帰還後の生活に大きな支障を呈するようになります。

このところ中東の情勢が不安定であり、テレビのニュースを見るたびにつらい気持ちになりますが、イスラエルという国は常に戦争の危険にさらされ、若い男性の多くが戦争経験を持っています。
戦争から帰国した男性の多くがうつ病に罹患し、仕事につくことができない状態になってしまうことが、国としての大きな問題になってしまいました。

もちろんSSRIなどを使って治療へ取り組みましたが、ここでも期待した治療成果がなく、体にも優しい生薬による治療を探すことが国家の重要事項になったのです。

単独の素材だけでうつ病に効果があるものはなく、結局は脳血流量を増やす血管拡張作用がある素材を中心に処方さることになりました。

うつの原因としてセロトニン説やノルアドレナリン説などが提唱され、それぞれの原因と思われる部位へ作用するSSRIやSNRIなどの薬剤が開発され、発売時には大きな期待をもたれて処方されます。そしてそれらの新薬の処方は一定の割合へ落ち着くのです。(日本でのパキシルは処方されすぎです)

この事実は、うつ症状が単独の原因で生じるのではないことを証明するものと思います。そして生薬を組み合わせることによってうつ症状が改善するのもうなずけます。

5時間糖負荷検査を行うと、無反応性の血糖曲線を描く場合には、とても高率で強い疲労感と抑うつ感を訴えらていて、その多くの方がうつ病の診断をされています。
無反応性の低血糖症は、脳血流量が著しく低下することと同じ状態であると言うこともできます。

同じ症状でも、体の中で起こっている反応や変化は様々です。これらの体内の状態は、血液検査を行い、詳細に評価することが必要になるのです。
正しい評価が治療成績の向上につながると思うのです。
| うつ病 | 23:52 | comments(0) | trackbacks(0) |


カナダで会った元患者さん
ホッファー先生を訪ねてカナダを訪れたときにお会いした、統合失調症の患者さまだったご夫婦について思い出しました。

このブログでも紹介したと思いますが、お二人は栄養療法で改善し投薬も不要になり、その後知り合って結婚されたそうです。

ご主人の前の席に座ったので、ご主人の経過を詳しく聞いたのですが、大学生時代に激しい幻聴などによって発症し、投薬によっても改善せず大学も辞めました。
ホッファー先生を知り、ナイアシンを中心とした栄養療法によって改善し、大学に再入学し見事卒業。そして司法試験まで合格されたのです。ご自分の選択で、精神疾患の患者さまが社会復帰することを仕事にしているのです。

今日は、医師向けの勉強会でしたが、なぜかこれまでのことをいろいろと思い出しました。

僕がこの治療を始めて短い期間ですが、多くの患者さまの投薬が不要になりました。必要最小限の1種類か2種類程度までの減薬が可能になった方も大勢いらっしゃいます。

・全く投薬が不要になられ大学へ入学した○○君
・もう一度夢に向かって予備校へ通い始めた○○君
・勇気をもって投薬を止め、さらに仕事を拡大しようとされている○○さま
・治療の経過で知り合った方と、この秋に結婚される○○さん
・本当にひどい症状から改善され、すばらしい絵を送ってくれる○○さん
・まだまだ症状は増悪緩解ですが、立ち向かっている○○君

まだまだ多くの患者さまが治療へ向かわれています。
多くの患者さまの勇気が、この仕事を継続させてくれています。

昨日、今日と30人以上の医師がこの治療の基礎的な理論を勉強してくれました。その姿勢は、本当に熱心なものでした。
これまでのご自分の医療や現行の治療法に疑問を持たれている方が多いことに驚きました。
精神科のドクターの参加も急激に増えています。

一日も早く、日本中でこの治療が普通に行われているようにするために、今日参加してくれたドクターと、これまで関わってくれた患者さまに勇気をもらった週末でした。
| 統合失調症 | 21:52 | comments(0) | trackbacks(0) |


本日の取材
今日は、八重洲の診療の前の時間に短時間の取材を受けました。
医師や医療機関向けのジャーナルを出している会社で、最新のジャーナルで、僕の新刊を紹介してくれています。サプリメントに対してとても理解がある方がいらっしゃいました。
その方が、新刊のことを「多くのドクターに読んでほしいと思い紹介しました」と言ってくれたのが嬉しかったです。

取材の目的は、『抗酸化』をどのように考え、栄養療法に取り入れているか?ということでした。
この『抗酸化』はいわゆるアンチエイジングの分野では、たびたび使われる概念です。簡単に言うと、体の中の“さび止め”と考えていただければよいでしょう。

アンチエイジングの分野では、αリポ酸やコエンザイムQ10など、話題の素材が次々と紹介され、競って様々な素材と合わせてサプリメントとして売りに出されています。

分子栄養学的には、体の中のサビ具合は、細胞の膜のダメージとして評価しています。つまり膜が弱くなってしまったことによる血液中の変化を測定して評価します。
そして、膜障害が進行しているばあいには、ビタミンEやビタミンC、そして最近では、これらに合わせてαリポ酸を併用して対応しています。このアプローチで多くの場合には、期待したデータの改善が得られます。

しかし一般的には、これまで抗酸化をどのように定量化かということで、様々な方法が提唱されてきました。いずれも一長一短だったのですが、最近になり簡便に抗酸化力と酸化ストレス度を測定することが可能になりました。

先日、その機械をつかって自分の酸化ストレス度と抗酸化力を測定したのですが、両方とも驚くほど良いデータがでました。
通常行っている血液検査でも、自分のデータはとても良好であるので、その相関性を確かめることができて良かったです。

明日、明後日は、ドクター向けの分子栄養学の講座を開きます。今回もまさに全国からドクターが集まってくれました。特に嬉しいのが、精神科のドクターが多く参加してくれていることです。
通常行われている治療に疑問を持ちながら仕事をしている精神科のドクターがいらっしゃるということだけでも嬉しく思います。
明日からの講義を通して、心と体の反応の関係について、ご自分で判断いただければ嬉しく思います。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:42 | comments(2) | trackbacks(0) |


アトピー性皮膚炎と亜鉛
アトピー性皮膚炎への亜鉛の重要性について何回かに分けてお伝えしました。
今回は、アトピー性皮膚炎と低血糖症への亜鉛の関与についてお伝えします。
新宿八重洲では、多くの精神疾患の方へ5時間糖負荷検査を行っています。患者さまの中には、アトピー性皮膚炎を合併されている方がいらっしゃいます。
このように精神疾患とアトピー性皮膚炎を合併している場合には、糖負荷検査の結果が重篤であることが多いのです。
これまでお伝えしたように細胞の新陳代謝は亜鉛が大切な働きをしているため、皮膚や粘膜などの代謝が激しい組織は亜鉛欠乏で影響が強くでます。

アトピー性皮膚炎を合併されている方の糖負荷検査は、糖負荷後のインスリン分泌が過剰であることが多いのです。
この反応は、消化管粘膜からの栄養素の吸収が急激に行われていることを想像させます。つまり消化管粘膜の機能が低下しているため、ゆったりと栄養素が吸収されず、急速の血液中へ流入しているということです。
消化管粘膜は、皮膚よりも代謝が激しいため、亜鉛の欠乏があれば容易にその機能が低下します。

またインスリンの分泌は、亜鉛によって調節されています。
血糖の変化に、適当な量のインスリンを分泌するように調整するために、亜鉛は大変重要な働きをしています。

低血糖症に古くから注目し、多くの患者さまへ糖負荷検査を行われている千葉のマリアクリニックの柏崎先生は、低血糖症の治療への亜鉛の重要性について著書で触れています。

アトピー性皮膚炎に関連して亜鉛について数回に分けてお伝えしてきました。亜鉛は、前立腺や精巣などの男性器官、そして卵巣などの女性器官にも高濃度に分布します。細胞の分裂という生命維持の本質に深く関与することもお伝えしました。

亜鉛は、生命の源に関係するミネラルです。
そして日本人が不足している代表的な栄養素です。
食事からも十分に摂取するよう心がけてほしいものです。
| 低血糖症 | 23:22 | comments(0) | trackbacks(0) |


アトピー性皮膚炎と亜鉛
さて、本日も引き続きアトピー性皮膚炎と亜鉛の関係についてをお伝えします。
このブログの主旨と異なるテーマですが、最終的にちょっと関係してきますのでお付き合いください。

昨日は、皮膚のバリア機能の維持に亜鉛とビタミンAの重要性をお伝えしました。そしてビタミンAの作用発現に亜鉛がきわめて重要であることも。

アトピーのもう1つの問題に、『かゆみ』という症状があります。これがやっかいです。特に夜間に『かゆみ』が強くなると、シーツが血だらけになってしまいます。実際に僕も子供の頃には、枕やシーツが血だらけになっていたものでした。

この『かゆみ』という症状は、皮下に炎症が起こっていることを示します。
炎症は、教科書的には次の症状を伴うものになっています。

○発赤・・・赤みを帯びること
○腫脹・・・腫れること
○熱感・・・ほてりや周囲よりも熱い
○疼痛・・・痛みがあること

この4つの症状が揃うことを炎症と古典的に定義します。アトピーの場合には、最後の疼痛をともなうことは少ないですが、そのほかはまさにそのとおりですね。赤く腫れ気味で、周囲の皮膚よりも火照っている。

アトピーは、皮下組織で繰り返し起こる炎症性の病気であると言うことができると思います。そのために、症状がひどいときにはステロイドを飲んだり塗ったりすることによって、炎症が早期のコントロールされ症状が軽減します。ステロイドは、強力に炎症を抑える作用をもつのです。

イギリスでは、γ-リノレン酸という栄養素がアトピー性皮膚炎の治療薬として認可されています。この栄養素は、体内で炎症を抑える働きをもつプロスタグランディンという物質の前駆物質です。
つまり体内でγ-リノレン酸が増えると、アトピーの炎症を抑える働きが増すと言うものです。そしてこの栄養素は当然ですが、ステロイドのような副作用はありません。

このγ-リノレン酸は、本来は体内で合成できるものです。しかし、この物質の体内での合成がスムーズに行えないのです。
体内で物質が合成されるためには、その合成反応に関係する酵素が十分に活性化される必要があります。γ-リノレン酸を合成するために必要な酵素の活性は、とても低いので不十分になるのです。そして悲しいことに日本人は特にこの酵素の活性が低いので、自らのちからでアトピーを治すことができないのです。

それでは、どのようにしたら体内で自分の力でγ-リノレン酸を作ることができるようになるかということです。
酵素には、その活性を引き出すための働きをする補酵素というものが存在します。つまり補酵素を十分に補っておくことによって、酵素活性が向上し目的の物質が合成されるということです。

なんだか、よく分からない難しい話になってきましたが、亜鉛はγ-リノレン酸を合成するための酵素の代表的な補酵素なのです。
ここでも亜鉛はアトピーの症状を軽減する重要な働きをするミネラルであることがわかります。

ちなみに、その他に補酵素となるものには次のようなものがあります。

○亜鉛
○ビタミンB6
○マグネシウム
○ビオチン

などです。
ビオチンを摂取することによって皮膚が改善するというのは、本日のブログのような反応を介しているということなのです。

アトピーと亜鉛については、あと1〜2回で終わる予定です。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:59 | comments(3) | trackbacks(0) |


アトピー性皮膚炎と亜鉛
アトピー性皮膚炎の治療は、皮膚科ではステロイド剤を中心とした軟膏などの外用治療です。

新宿でも八重洲でも、アトピー性皮膚炎の治療を目的に来院いただいた場合には、外用薬は基本的には使用していません。

治療方針は、そのほかのどのような疾患で来院されたときと同じように、採血による血液検査データをもとに栄養素を選択し、食事とサプリメントによってアプローチする栄養療法になります。

タイトルにあるように亜鉛はアトピー性皮膚炎の治療ではなくてはならない栄養素になります。この栄養素に関しては、血液検査で欠乏が認められなくてもある程度の量は処方されます。

亜鉛がどのようにアトピー性皮膚炎の改善に有効であるのか、いくつかの理由が考えられているので、その理由についてお伝えしようと思います。

皮膚科の先生の中にも、ステロイド軟膏でアトピーの症状が改善した後に、非ステロイド軟膏とともに亜鉛華軟膏という亜鉛が含まれている軟膏を使う方もいらっしゃいます。亜鉛が創傷治癒を促進する作用、つまり傷が治る速度を速める効果を持っていることは、通常の医師では勉強しています。しかし、なぜ亜鉛が傷を治す速度を速めるかは、その基礎的な理由を知っている方はあまり多くないのではないでしょうか?

アトピー性皮膚炎では、皮膚の角化異常を呈するため、皮膚がフケのようにカサカサとはがれることが多くあります。
通常でも日焼けを起こすと、皮膚がはがれるような状態になります。これも1つの角化異常の状態です。
通常であれば、皮膚の角化が順調に行われるために、皮膚がフケのようになったり、はがれる様な状態にはなりません。知らない間に日焼けが治まり、むけることはありません。カサカサとフケのように皮膚がはがれることもないのです。

アトピーでは、皮膚のバリア機能が破綻していることが知られています。つまり皮膚への刺激、たとえば気温や気圧、化学的な刺激、細菌による刺激などが、皮膚のバリアによって防御されずに、直接皮膚を通して体内へ伝えられているということです。
このバリア機能を正常に維持するために最も大切なことが、皮膚の角化を成熟させることです。

皮膚の角化とは、皮膚細胞の分化によって行われます。昨日、細胞の分化にはビタミンAが重要な働きをすることをお伝えしました。

皮膚は、その基底細胞から亜鉛の働きによって細胞分裂を繰り返し、やがてビタミンAの働きによって分化し、角質細胞になります。
この分化に重要な働きをするビタミンAは、常にレチノール結合蛋白という最も半減期が短いタンパク質によって結合され輸送されるのです。つまりビタミンAは、通常では肝臓に貯蔵されていて、必要時には新鮮なタンパク質によって結合され輸送されるのです。
ここでちょっと横道へそれますが、ビタミンAは過剰に摂取すると肝臓へ蓄積されて危険であると、いまだに主張するドクターや専門家がいますが、これは蓄積ではなく、貯蔵です。つまり必要なので蓄えているということです。

ビタミンAは、特有の輸送蛋白がないと働けないということです。
この輸送蛋白を合成するときには、亜鉛が必須の栄養素であるのです。

つまり亜鉛は、皮膚細胞が正常に分裂する過程でも、正常に分化し角質細胞になる過程でも、そのどちらの過程でも重要な働きをする大切な栄養素なのです。

ついでに、レチノール結合蛋白は、もっとも半減期が短いとお伝えしましたが、タンパク質の不足によって最も影響をうける体内のタンパク質です。つまりアレルギーを心配するあまり、タンパク質の除去を厳しく行われているアトピー性皮膚炎の方では、タンパク質の代謝が著しく抑制されているので、いくら亜鉛やビタミンAを摂取していただいても効果がでないのです。

次の機会には、アトピーに伴う強い痒みと亜鉛の関係についてお伝えしようと思います。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 22:38 | comments(0) | trackbacks(0) |


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