うつ病からがんの治療までオーソモレキュラー療法(栄養療法)の実際
うつ病、パニック障害、発達障害からがんの治療まで海外で広く実践されている「薬だけに頼らない」オーソモレキュラー療法を紹介します。投薬治療が中心のうつ病や統合失調症などに多くの実績があり発達障害にも応用されています。高濃度ビタミンC点滴療法は、がんの治療に新しい可能性を提供します。

ご挨拶
溝口 徹

溝口 徹(みぞぐち・とおる)
自分にとって必要な栄養素を知ること。そして、その栄養素を十分に摂取すること。正しく、十分な栄養素が、自分の心と身体を、より良い状態に改善させます。
精神疾患の診断を受け、多くの薬を用いて対症療法の治療をされている方が多すぎます。最適な代謝が、脳内の神経伝達物質の分泌を適正化します。その結果、薬が必要であった症状の多くが改善することを、分子栄養学的なアプローチでは多く経験します。
このブログでは、日々の診療で経験する多くの患者さんの経過や、その背景にある学術的な作用を、できるだけわかりやすく伝えてゆきます。本来の自分らしさ取り戻すために、少しでも役立てていただければ嬉しく思います。

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エビリファイの感想
エビリファイは、これまでの抗精神病薬の多くの副作用を解決した薬として、大々的に統合失調症の治療薬として登場しました。

新薬が登場するときには、日本の場合では通常は海外で多くの臨床実績があるものが認可されます。
この薬もこれまでの薬の錐体外路症状や肥満や過食などの副作用が少ないという夢のような薬として大々的に宣伝されてきました。
僕が関係する患者さまにも、何人かの患者さまがエビリファイを併用し始めています。八重洲のクリニックでは、薬剤を処方することもあるのですが、新宿の場合には基本的に薬剤は、これまでの主治医の先生にまかせていることが多いのです。

エビリファイへ変更したことが良い選択だった方がいらっしゃいます。
その方は、リスパダールを中心に処方され錐体外路症状とアカンジアが強く出ていた方です。その女性は、エビリファイへの変更で副作用がきれいに消失し、とても楽そうな表情に変わりました。

しかし、最近になりどうも印象が変わってきています。
エビリファイによるアカンジアは、用量が少なくてもかなり強く出るようです。それを抑えるには、通常量のワイパックスでは歯が立ちません。ベンゾジアゼピンを睡眠量ぐらいまで使用しなくてはならないようです。

実際に薬を服用されている患者さまは、アカンジアが生じることによって、本当に辛い症状が加わります。どうしようもない感覚のためイライラがつのり家族へも大きな影響がしょうじます。今日の診察中も、エビリファイによるアカンジアの増強のコントロールで、お母様から緊急の相談の電話をいただきました。

ホッファーは言いました。
精神疾患を単独で治癒させるような『魔法の弾丸などは存在しない』と・・・。
栄養アプローチを併用することによって、表情や表現、行動や思考などが、徐々に本来持っているものに戻っていくさまを見ていると、ホッファーの言葉が正しいものであると日々感じているのです。

そのホッファーに会うのもあと2週間後になりました。
前回お会いしたときから、約2年が経ちました。たしか今年で90歳だと思います。
世界的権威ですが、ユーモアにとんだやさしい人柄のホッファー先生に会うのが楽しみです。

新宿や八重洲で行っている栄養療法は、ホッファー先生が紹介している治療法と基本的な部分では共通するのですが、検査データからの情報を重視するというオリジナルな部分があるのです。今回の発表では、その部分を伝えてこようと思っています。
| 統合失調症 | 23:39 | comments(13) | trackbacks(0) |


ある患者さまの経過
本日来院いただいた患者さまが、新宿のクリニックを受診したときに服用されていた薬は以下のような処方でした。

リスパダール
ジプレキサ
アキネトン
レンドルミン
パキシル
レキソタン
デパス

この処方を見ると、統合失調症、うつ病、不眠症、不安神経症・・・・などの診断名がつけられていることが容易に予想できます。
おそらく幻聴や幻覚などを主な症状とし、強い疲労感ややる気のなさなどを付随する症状として訴えられたのでしょう。そして診察を重ねるたびに、寝つきの悪さや急激に訪れる不安感などが症状としてあることを医師へ報告されたのだと思います。

このような薬剤の組み合わせは、日本の精神科治療では良く見られるものです。実際に診療に当たる医師の立場は理解できますが、このような処方によって満足できる治療効果が上がっていないときに、勇気をもって薬の整理をして欲しいものです。このブログでもお伝えしましたが、多剤併用によって精神疾患の治療を行っているのは日本独特であり、多剤併用の場合と単剤投与で治療の予後には差がないことも報告されているのですから・・・。

この患者さまは、一般的な血液検査データからは、重度のビタミンB群の不足と、血糖調節の異常が疑われました。そして5時間の糖負荷検査によって、重度の低血糖長であることも診断されました。
このように、検査データで異常が判明した場合には、とにかくその異常を補正することが大切です。当クリニックにおける治療の中心は、検査データに基づいた食事とサプリメントによる栄養アプローチになりました。

もともと薬剤の効果が少なかったのでしょう。栄養アプローチを併用しながらの減薬はスムーズに進み、6ヵ月後には薬剤は全て不要になりました。本日の外来でも、日常生活において頻繁に運動も可能になり、問題なく眠ることもできるようになりました。

これからの問題は、これまでの組織に戻って同じ仕事をするようにするか、あるいは全く新しく自分の働く場所を探すか・・・と言うことになります。

どちらにしても、この患者さまにとっては大きなストレスになることは明らかです。
あと数ヶ月の期間で、どれだけストレスに負けない状態を身体面で作ることができるか・・・、それが栄養アプローチの目標になりました。

本日の検査結果が楽しみです。
是非とも、自分の力で苦手でストレスの大きい状況を克服して欲しいものです。
| 統合失調症 | 23:22 | comments(2) | trackbacks(0) |


自律神経の回復
統合失調症、うつ病、パニック障害、神経症・・・

これらは、精神疾患と呼ばれるものです。
しかし、これらの精神疾患と診断された方には、多くの身体症状を伴うことがあります。
例えば、統合失調症の患者さまには、頭痛を訴えることが多くあります。うつ病の患者さまには、強い疲労感を訴えることがあります。パニック障害や神経症などでは、ほてりや動機、手足のしびれ冷えなどを伴います。

これらの身体症状には自律神経の働きが乱れたことによって起こされるものが含まれます。

先日来院され、改善の経過を報告してくれた患者さまが、クーラーの設定温度についてお話してくれました。

昨年の夏は、クーラーの温度を16℃に設定しなくてはならなかったそうです。そんな温度に設定しても身体の芯に熱感があったそうです。
今年の夏は、30℃に設定していても心地よくすごせると言うことでした。

また別の患者さは、クーラーがとにかく苦手で、長袖や厚手の靴下が夏でも手放せなかったものが、今年は半そで、サンダルで過ごせるということでした。

自律神経失調症というと、精神的なものと思われがちですが、上記のような体温調節などを行っているのが自律神経です。眠りのリズムも自律神経の働きとも言えると思います。

治療によって精神症状だけでなく、多くの身体症状が改善するとき、本来働くべき自律神経の機能が改善していると言うことができるのかもしれません。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:58 | comments(23) | trackbacks(0) |


SSRIの効果と副作用; ある患者さまの経過から
先日、八重洲のクリニックを受診された患者さは、次のように経過を話してくれました。
『これまでは良く効いていた抗うつ剤の効果がなくなり、その薬を増量すると急に副作用が出てきてしまいました。』

はじめにうつ症状が出たのは、いまから2年ほど前だったそうです。
受診には抵抗があったそうですが、思い切って心療内科を受診し、デプロメール(ルボックス)というお薬を処方されました。そのお薬を飲み始めて2週間ほどしたら、今までの抑うつ感や身体の疲れが嘘のように改善したそうです。あまりに調子が良くなったので、徐々に減薬しお薬が不要になりました。
その後、引越しをきっかけに再び同様の抑うつ感が出現。そのときには、ためらいなく引っ越し先の心療内科を受診。以前の抑うつ症状でもデプロメールがよく効いたので、そのときも同じ様に処方してもらいました。その時も以前と同様に症状が改善しました。
今度は、急に処方を減らさないように気をつけ服用を継続されていました。

この数ヶ月、抑うつ症状が再度増悪してきました。そして継続して飲んでいたデプロメールを増量して対応したのですが効果がありません。そして主治医の指示で、デプロメールの増量をしたところ、急にイライラ・そわそわした感情が増え、自分ではないような行動を起こしそうな感覚の副作用が出現したために、デプロメールを減量しなくてはならない状態になってしまったとうのです。

この経過は、多くのことを示してくれています。
デプロメールというお薬は、SSRIという抗うつ剤の1種です。以前もこのブログでお伝えしたように、脳の神経細胞にあるシナプスという場所で、セロトニンの作用を増強させる働きを持ちます。
うつ症状の原因のひとつに、このセロトニンの作用不足があります。この患者さまの抑うつ症状は、セロトニン作用不足が原因であることは明確ですね。それでは、なぜ同じ薬が効かなくなってしまったのでしょうか?
それは、SSRIというお薬を使ってセロトニンの作用を増強してきたのですが、その作用は自分の脳でセロトニンを作ることによるものではなかったためです。つまり、長期間のSSRIの使用によってセロトニンが減少してしまったのです。

それでは、デプロメールの増量をしてお効果は上がらず、副作用だけが出てしまったのはどうしてでしょうか?
デプロメール(ルボックス)やパキシルと言ったSSRIは、2倍量の薬を使ったら、効果も2倍になるかというとそうではないのです。ある投与量を超えると、効果も副作用も急激に増えるという特性をもっています。
そのために、投与量を間違えると重篤な副作用が出現しています。特に若者では、副作用によって自殺の危険性が高くなることが報告され、つい先日には厚生労働省から厳重な通達が行われました。

栄養療法は、自分でセロトニンを作る能力を向上させることを目的にします。薬のように切れ味はないかもしれませんが、自然で安全なアプローチであることは確かですね。

| うつ病 | 23:37 | comments(9) | trackbacks(0) |


スポーツ障害の改善例
今日は、ブログのタイトルからは外れますが、スポーツ障害で辻堂で来院された患者さまの経過についてお伝えします。

この患者さまは、クラシックバレエを幼少時から行っていらっしゃいます。
辻堂のクリニックは、4件目の医療機関だったそうです。

改善したかった症状は、足先の痛みでした。
バレエに必要な姿勢や運動を行うときにどうしても足先の痛みが強く自分の思った演技ができなっかそうです。

最初のクリニックを受診したときには、大切な舞台を半年後に控え、その舞台でソロで演技することが決まっていたため、なんとしても痛みを治して大切な舞台に万全の状態で演技しようと思っていたそうです。
最初のクリニックは整形外科で、頻繁にレントゲン写真の撮影を繰り返し、電気の治療をひたすら継続するだけだったそうです。
一向に改善しない症状のため、整体などにも通われたそうです。
3件のクリニックにも通い、頻繁にレントゲンも撮影し、整体にも通っても痛みは変わらず、結局舞台への出場はキャンセルすることになってしまいました。

そんな状況のときに痛みのコントロールを行っている辻堂のクリニックを受診されたのでした。
今振り返ると、初診時は不安や医療機関への不信のような雰囲気があったように記憶しています。辻堂のクリニックでは、基本的にどんな症状で受診しても血液検査をおこなっていますので、この患者さまも詳しい検査をおこないました。
もともとの体質は、とても素晴らしいものをお持ちのかたでしたが、女性で運動をしっかりされている方に特有の栄養バランスの乱れがありました。

痛みの原因は、栄養障害による足底の腱のトラブルであると判断しました。腱を良好な状態に保つための栄養素が軒並み不足していたのです。
この状態と同じようなものに、授乳中の親指付け根の腱鞘炎があります。

足底の腱鞘炎も、授乳中の親指の付け根の腱鞘炎も栄要障害が関係していると、一般の医学書にも記載はありませんし、一般の医師にも認識されていません。

痛みのコントロールのために、治療の初期には注射を何回か繰り返しました。
そして当然ですが、サプリメントをがっちり飲んでもらいました。
定期的に採血を繰り返し、症状と全身状態が改善していることを確認しました。現在では、痛みは全くなく、検査データもほぼパーフェクトな状態になっています。
そして当然ですが、今年の舞台には万全の状態で上がることができました。そして昨年は辞退したソロ演技を、今年はリベンジして演じることができたそうです。

運動選手や、ダンスなどを行っている方は、自分の身体のパフォーマンスには繊細な感覚をお持ちのようです。
運動で使用される筋肉や腱などは、十分な栄養素の補給がなければ、質や量の低下が起こりパフォーマンスが著しく低下します。

新宿のメンバーさまには、世界でもトップレベルの運動選手がいらっしゃいますが、栄養の知識は実に乏しいものです。
運動パフォーマンスと栄養は、密接な関係にあることは海外のチームの方針を見れば明らかです。日本でもナショナルチームには栄養を管理するスタッフが居ますが、どうも十分に機能しているとは思えない状況です。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:19 | comments(0) | trackbacks(0) |


検査結果の評価
新宿や八重洲のクリニックでの血液検査の結果をお話しするときに、基準値(いわゆる正常値)を参考に評価する方法と異なるコメントでいろいろとお話をします。

たとえば、いままでは一度も鉄欠乏を指摘されたことがない方も、重度の鉄欠乏であることをお伝えすることも多くあります。

これは、検査結果を正しく評価できない医師にも問題がありますが、基準値を決める方法にも大きな問題があるのです。

例えば貯蔵鉄の量を反映するフェリチンについて考えて見ます。
私たちの身体にとって必要かつ十分な貯蔵鉄の量は、1000mgであることが分かっています。そして検査で測定する血清のフェリチンは、フェリチン1ng/mlが貯蔵鉄8mgに相当することも分かっています。
そうすると、私たちの身体にとって必要な貯蔵鉄量を反映する血清フェリチンの値は次の式で計算されます。
   1000/8=125
つまりフェリチンの適正値は、125ng/mlになる訳です。

ここで、一般に用いられているフェリチンの女性の参考値を見てみましょう。
参考基準範囲 (女性) 6.2〜138ng/ml

この基準範囲を正常を示す範囲として医師が診断の根拠として用いてしまうと、フェリチン値が6.2ng/mlよりも少しでも高い値であればOkになります。しかし実際には、その6.2ng/mlのフェリチンが示す貯蔵鉄の量は、6.2×8=49.6mgであり、必要十分量のわずか4.9%しかないのです。

なぜこのような実用的でない基準値が設定されているか?
このような疑問をもたれる方がいらっしゃると思います。

一般に参考基準範囲を決めるのは、正常な方々から採血した結果を基に、検査結果の上下2.5%を除いた、95%の結果が含まれるものとしています。
正常と思われる方々の結果の95%が含まれるので、これはあてになると思われいているのです。
しかし、以前の厚生省の統計で、日本人女性の半数以上は鉄欠乏であるという結果が出ていました。つまりここで言えることは、正常と思われた女性の半数は鉄欠乏であるということです。半分以上が鉄欠乏で人たちから採血したデータで、貯蔵鉄の参考基準範囲を決めようというほうが無謀ですね。

このように実情を反映していない基準範囲が多くあります。

今日も、約60項目に及ぶ検査結果で、基準範囲からは何も外れていないのに、同じ結果を栄養面から評価することによって、ボロボロという状態である方がいらっしゃいました。
栄養面から正しく評価することなく検査データを正常であると判断してしまうので、多くの症状を訴える場合に、

『精神的なもの』
『ストレス性のもお』
『自律神経の乱れですね〜』
『更年期の症状でしょう』

などと診断され、治療が始まってしまうのです。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:34 | comments(0) | trackbacks(0) |


テキストを作っています
来月10日に、医師向けに血液検査データの読み方の勉強会を主催します。
これまでも同様のテーマで話をしてきましたが、参加していただく方々が一般のかたから医師まで広い範囲であることが多く、どの程度の基礎的なことまで話をしてよいのか迷うことが多くありました。

今回の勉強会は、すでに僕の話を聞いていたり、分子栄養学の勉強会にも参加されている医師が多いため、これまでの内容とは少し異なるものにしようと思いました。
これまでつぎはぎのテキストを用いていたのですが、今回は初めから内容を見直し、より臨床で応用可能な、基礎的な分野までを含んだものにしようと思っています。

そのためには、これまで出版されているような検査データの解釈が書かれている書物は参考になりません。
分子栄養学のこれまでの講義で用いたテキストを、検査データの読み方へ応用できるようにしたり、各項目がどのように測定されているのかなど、医学部の学生時代にも用いなかったような書物を参考にしなくてはなりません。

それぞれの書物は、1冊が分厚いのです。

このところ新宿と八重洲に行ったりきたりなので、常に書物を持ち歩かなくてはなりません。日中の暑さ厳しいときに両手でかばんを持っての移動は結構こたえます。

最近の勉強会は、これまで参加してくれたドクターからの紹介であったり、分子栄養学の勉強家で興味を強く持ってくれたドクターなどが参加してくれます。僕との義理で無理やり誘っていた以前とは全く異なる雰囲気です。

先日も、突然あるクリニックのドクターから電話をいただき、是非ともこの方法を勉強したいのだが、9月10日はどうしても予定がつかないので、なんとしても勉強できる機会を作ってくださいと依頼されました。

そのような姿勢で参加いただく方々です、こちらもしっかりと準備をしなくてはと思っています。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:06 | comments(0) | trackbacks(0) |


過食症の治療経過 その2
昨日の過食に悩む女性の患者さまの続きです。
過食は、通常は自宅で起こる症状であるため、職場や学校での人間関係では理解されません。この患者さまも、20歳代で仕事もされているし、きれいにオシャレもしているとても魅力的な女性です。普通に彼女を知っている方には、疲れて眠くなるまで大量のものを食べ続けなくてはならないことは、とても信じられるものではないでしょう。

治療を始めて約5週間後の最初の外来での話しです。

・ 眠りが改善し、朝起きることが楽になってきた
・ 便通がとてもよくなった
・ だるさや、どうしようもない疲労感が減ってきた
・ 生理前には強く落ち込んでしまう。
・ 外にでることを楽しめるようになってきた
・ 過食してしまう回数が減ってきているが、2週間に1回程度はまだ過食してしまう
・ 過食してしまうときでも、身体によいものを食べるように選ぶようになった
・ 一番ひどいときの症状から30%ぐらい改善していると思う

そして以下は治療を始めて3ヵ月後の経過です。

・ とても良くなってきています
・ イライラするときには、そのきっかけが何かを考えるようになり、イライラを自分でコントロールすることができています。イライラも減りました。
・ 過食することも全くありません
・ 以前は仕事からの帰宅時に、散歩をねだる犬の鳴き声に腹を立て、犬など要らないと思っていましたが、最近は疲れていてもずっと前のようにかわいいと思い散歩へ連れて行っています
・ 他人へやさしい気持ちで接することができるようになってきました
・ 休みの日など、何もすることがないときに不安を感じることがあります

このときの外来で、2回目の血液検査を行いました。結果はまだ出ていませんが、きっと自覚症状に一致して改善していることでしょう。
診察室へ入ってきたときの印象も、とても軽やかになられていました。笑顔もとても自然な感じになり、やさしさを感じることができます。

糖代謝に異常がある場合には、適度に筋肉を使っていると、比較的自律神経は安定しています。この患者さまも、休みの日などに身体を休めているときの方が調子が悪く、不安感などが生じています。
今後の治療によって、
『何もすることがない、ただ暇をボーっと楽しむことができる』
という状態になると、さらに良好なステップになっていると言うことができるでしょう。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 09:29 | comments(2) | trackbacks(0) |


過食症の治療経過
20歳代の女性の患者さまです。

約4年前から続いている過食の治療を目的に当クリニックで栄養療法をおこなっています。この4年間は、食事のコントロールが困難であり、体重は3〜4kgの増減を繰り返していました。
過食という症状は、ストレスに関係して起こりやすくなるため、心療内科や精神科などで投薬治療が行われます。この患者さまも当クリニックを受診される前に、数件の心療内科クリニックを受診されていました。

来院時の症状や、栄養療法による症状の変化が、同じ症状で苦しまれる患者さまにとって貴重な情報になると思い、患者さまの了解をいただいたので治療経過をお伝えします。

初診時の情報
・通常は和食中心で、1日3食で規則正しく食事している。
・約5年前から健康のために多くのサプリメントを利用している。
・心配事やイライラがあると、過食をしてしまう。食べ物は、米や菓子パン、甘いものや柿ピーなどを良く食べる。
・過食してしまうと、眠くて疲れるまで食べ続けなくてはならない。
・いつも食べ物のことが頭から離れず辛い。
・疲れやすい、いくら寝ても眠い、やる気が起きない、集中力が落ちた

この患者さまは、インターネットで検索して受診してくれたのですが、キーワードは『低血糖』でした。以前の健康診断で血糖値が56mg/dlで低血糖を指摘されたのですが、担当の医師からは特に何も言われなかったことが気になっていたそうです。

初診時の検査データでは、重篤なビタミンB群の不足、血糖調節の異常、鉄欠乏など、いくつもの栄養障害を指摘することができました。検査データに即した食事の指導とサプリメントによる栄養アプローチが始まったのが今年の5月でした。

どのような治療経過をたどられているか・・・

次回にお伝えしようと思います。
| オーソモレキュラー療法(栄養療法) | 23:22 | comments(4) | trackbacks(0) |


低血糖症の食事の段階
5時間の糖負荷検査を受けても受けなくても、血糖調節の異常が予想される場合には、糖を除去する食事を指導することになります。
日本人の食事には、あまりに多くの砂糖が使用されているため、クリニックの指導に対してどのようにして良いのか、途方にくれてしまう方がいらっしゃいます。

料理をされる方はご存知のことと思いますが、日本料理には砂糖を多用します。その量は、フランス料理とかイタリア料理とかと比較しても多くなります。
そこで厳密に砂糖の使用を禁止すると、どのように献立を考えてよいのか困ってしまうようです。
また、白米を多用するため、おかずの味付けに砂糖を使わないようにしても、糖質(炭水化物)の割合はとても高くなります。
そのような食習慣の日本人がどのように糖質制限をするか、そしてどのように指導するかも困るのです。

『○○は食べても良いですよ!』

と許可すると、ここぞとばかりに量を摂取することを経験してきたために、指導する立場としてもついつい厳しくなってしまいます。
そこで、今回は糖質制限のステップを作ってみることにしました。

ステップ1
砂糖を含む飲み物やお菓子、スナック菓子などを制限する。
例)ジュース(100%や野菜ジュースも含む)、スポーツ飲料、健康ドリンク、洋菓子、和菓子、スナック菓子、せんべ、菓子パン、即席ラーメンなど・・・

ステップ2
ステップ1に追加して、白米、食パン、ラーメン、うどん などを制限する。
対策:玄米や発芽玄米、胚芽米などのできるだけ精製されていない米を利用する。パンも漂白されていない小麦粉を使ったもの(全粒粉のパン、胚芽パンなど)に変更する。麺類を食べるときには、できるだけ野菜や肉、玉子などを同時に摂取する。

ステップ3
ステップ2に追加して、調味料などに含まれる砂糖も可能な限り制限する。
市販のソースや調味料には、ほとんど砂糖が使用されています。レトルト食品に含まれる砂糖にも反応する方が多くいらっしゃいます。
このステップまで必要な方は、自分は砂糖がダメな身体であると観念してください。

どのステップの糖質制限でも、基本になるのは次のことです。

『高タンパクを、少量・頻回に、よく噛んで!』

例えば、”すき焼き”よりも”しゃぶしゃぶ”の方が良いですね。たれに含まれる砂糖がすき焼きのほうが多いので。同じ理由で、焼肉も避けたほうが良いですね。焼肉よりもステーキにしましょう。きっと白米も少なくて済むでしょう。
アルコールを飲むときでも、焼酎ならウーロン茶で割ってくださいね。おつまみも枝豆やチーズ、魚などの蛋白質でお願いします。
どうしても甘いカクテルが飲みたければ、ゆっくりとおしゃれにチーズを食べながらお願いします。(ああ、決してお勧めしているのではありません)

何も食べるものがない!
なんて言わないで、ぜひとも糖質制限を楽しんでください。

アマゾンの奥地やアフリカの原住民の方々は、生まれて死ぬまでの期間で、精製された砂糖などは摂取しなくても、つるつるピカピカのお肌で、アレルギーもなく、きっとうつ病やパニック障害も極めて少ないことでしょう。
| 低血糖症 | 23:58 | comments(11) | trackbacks(0) |


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