23歳の男性の患者さんです。
久しぶりに新宿を受診し栄養の解析検査を受けてくれました。
なぜ久しぶりかと言うと、今は海外に留学中でやりたかった専門の勉強をしているからです。
彼が新宿を初診してくれた時には統合失調症の診断でジプレキサをかなりの量で処方されていました。
実際に電車や学校などの不特定多数の人がいるところでは、強い違和感があり妄想と言えるような症状がありました。大学にはどうにか通学していましたが、休むことも多く継続して卒業することにはかなりの困難を伴うことが予想される状況でした。
栄養アプローチに取り組み、慎重に減薬と処方の変更を進めたところ周囲との違和感が薄らぎ、大学への通学も容易になり新宿への通院もお母さんなしで一人で来れるようになっていました。
頭の働きがはっきりしてきたときに、本人から発達障害の専門医を受診したいという相談がありました。
幼いころから自分が感じていた違和感は、発達障害に当てはまることが多いためでした。
栄養療法のことも理解し、成人の発達障害にも詳しい知り合いの医師を紹介したところ、統合失調症と診断された多くの精神症状は、発達障害の一つであるアスペルがー症候群にともなう反応性の精神症状であろうという診断でした。
彼にとってその診断と医師からのアドバイスは腑に落ちるもので、さらに自分を力付けるものだったようです。
栄養アプローチの継続と減薬が進み、大学を卒業する前に海外へ留学して勉強したいという相談を受けたのです。
お母さんは留学にたいしては不安や心配が強くどちらかと言うと反対だったようです。
ところが食事の注意やサプリメントの継続、そして自分の判断で減薬をしないことなどを約束して海外へ向かうことになりました。
留学する前に、留学先の大学教授へ彼の状態について以下のような手紙を書き事前にお知らせしておきました。
・アスペルガ‐症候群であること
・落ち着いているがストレスによって反応する可能性があること
・食事について糖質制限と高たんぱく食が必要であること
・サプリメントを継続して服用する必要があること
・少量の抗精神病薬を服用していること
すると留学先の大学は、彼のためにサポート体制を作って待ってくれていたのです。
授業の内容を録音したテープが渡されました。
また黒板を写すことが苦手であることを理解してくれていて、事前に授業内容の資料も準備してくれていました。
発達障害の方々は、授業を聞きながら黒板をノートへ写し、自分の考えをメモする・・・・などの一連の作業をすることが苦手です・・・というかできないと言えるかもしれません。
話を聞くときには、聞くことに専念し集中します。ノートをとるときにはそれに集中することができます。考えるときには集中して考えることができます。個別であれば素晴らしい集中力で作業することができるし、ストレスを感じないのです。
さりげない大学の配慮は、彼の勉強を快適にしてくれただけでなく、日本では苦痛だった教室が心地よいものになりました。もともと個を尊重し、個人の違いについてを問題にしないお国柄も、彼には良い環境だったのでしょう。
先日の診察室では、本当にすっきりした雰囲気で生き生きした雰囲気が伝わってきました。
日本では家に居ることが多いインドア派だったそうですが、アウトドア派になりましたと言っていました。
休日には外へ散歩へ出かけ、クラスメートとダウンタウンにでて買い物を楽しんだりしています・・と教えてくれました。
患者さんの改善経過は、医療に関わる人間には最大の喜びです。
今日紹介した患者さんだけでなく、日々の生活での何気ない改善を教えてもらうときにも同様の喜びがあります。
そんな貴重な機会に日々触れることができ、いつも嬉しく光栄に感じています。
治療に取り組んでいる皆さんをいつもそっと応援しています。